2013年4月5日金曜日

第三回路地ゼミ「Image Map」

初めに二つ、前置きをしておく必要があると思います。一つは「認識の方法」、もう一つは「デザインサーベイの功罪」について。

まず、前回のゼミでは、「路地」とは近代以降を生きる私たちの認識の中で初めて現象する事象であり、認識の多様さに依ってしかその意味を照射することは出来ないということがテーマとして浮かび上がりました。
その中で私たちは、様々な視点から路地を捉えてみることを試み、「時間」や「認識のずれ」、「奥性」や「レイヤーの数」といった言葉を拾いだす作業を行ってきました。
つまり、「路地」というvoidを中心として、その周縁の論理を精緻に構築していくことで「路地」を言語化していくことが、本ゼミの姿勢である様に思います。誇張して言えばそれは、曼荼羅的東洋的な思考の方法、タルムードに代表されるようなユダヤ的な思考の方法、イスラムの都市形成の方法、「ゲニウス・ロキ」(鈴木博之さんは「地霊」と訳している)の本来の意味と同様の思考形質であると思います。

もう一つ。1960年代以降に盛んに行われ、論じられた「デザインサーベイ」が何故一時的なブームで終わってしまったのか、ということは度々ゼミの議題にあがります。個人的に思うことは、そもそもデザインサーベイの目的は、消えゆく集落の記録であったり、実測作業を通じて空間を身体化するために始まったことと思いますが、それがいつしかカタログの作成や、発表のための調査に態勢が移り変わってしまった。それは、学術そのものが体系化し形式化していく時期と同調していたように思います。
つまり、本来観測者の主体性や身体性に多くを負っていたものが、評価の客観性や応用の方法に多くを求め過ぎたのではないか。

さて、前置きが長く大きくなりすぎましたが、私たちは今回、以上のことを踏まえてImage Mapの作成を行いました。
目的は大きく分けて3つありました。
・今までの路地の写真を分布的に整理していく方法とは別のやり方を発見すること。
・それぞれの主観的なImageを尊重すること。
・それぞれの認識の方法の関連性を発見すること。

13.04.03 Image Map
グループメンバーの4人がそれぞれ色の違うペンを持ち、路地の写真の中から無作為に選んだ写真を中心において、各自が連想する言葉を拾いだし、それらを自由に繋げていきました。そしてさらにそこに表れた言葉から連想される、路地や路地的な写真を外周に添付していくことで現時点でのImage Mapとしました。

やってみてわかったことは、この方法は、今まで行ってきた「路地」の認識に対するメタ的な認識の方法としては効果的であること。逆に、あくまで表層を滑る様にビジュアル化したモデルでしか無く、それぞれの言葉や認識の深度に対しては言及し得ないこと。
仮に、この方法を空間的にも時間的にも無限に拡張して行うことが出来れば、参加した者たちの主観の集積として、この路地ゼミの様態をもっとも的確に表現した地図と成り得ると思います。また、その地図をさらに立体的に構築することが可能であれば、私たちにとっての「路地」の認識のモデルと呼んでもいいものではないかと思います。

質疑応答の中でもありましたが、この地図の中心を「路地」という言葉からスタートした方がより純粋なImage Mapと成り得たのだろうと思います。また、一度即興的に作成した地図を整理していく過程、つまり言葉を取捨選択しヒエラルキーをつくる作業が必要になるのではないか。しかしそのことと、主観の集積ということは矛盾するのではないか。といった議論もありました。

この地図の最も重要な役割は、「私たちの認識の集合を認識する」といった、確認作業にある様に思います。なので、今後より「路地」を認識するための言葉が研ぎ澄まされていった段階で、もう一度同じ地図を作ってみることで、新たな発見があるのではないかと期待しています。


文責:早田大高

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