2013年6月24日月曜日

第四回路地ゼミ13.06.20議事録

約4ヶ月前、「路地とは何か」というテーマから発生した路地ゼミは、それ以外に明確な指標を持たないまま、手探りの状態でスタートしました。私達はその活動を研究室内ゼミやフィールドワーク、そしてこのブログの「今日の路地」で継続的に行い、それらのまとめとして5月には『路地本』を製作し、そこで路地ゼミはひとつの段階を終えることとなりました。

このような過程を経て、今回から路地ゼミは第二期に入ったと言えます。
6月20日のゼミでは今後の方針が議論されたわけですが、その活動報告の前に一先ず、『路地本』よりその目次と序論を紹介したいと思います。



〈目次〉

□ 研究目的

□ 既往研究

□ 認識の方法
 1.生活の路地としつらえの路地
 2.マルタモデル
 4.パラメータ
 5.認識のずれ
 6.時間
 7.Image Map
 8.可変度
 9.認識のシークエンス
 10.神楽坂フィールドワーク

□ 今日の路地 
 1.「それから」/早田大高
 2.イメージマップ/吉川由
 3.生活の路地/松岡啓太
 4.広場と路地/斎藤愼一
 5.『見えない都市』/佐々木崇
 6.「猫町」/岩澤亮介
 7.東京Y字路/塩谷歩波
 8.人間のための街路/百武けやき
 9.暗色世界/津田光甫
 10.Concept learning meaningful/Marta Perez Franco
 11.路地のジレンマ/伯耆原洋太
 12.名と路地/赤池一仁
 13.路地とイメージ

□ 付録
 路地目録

□ 議事録
 第1回路地ゼミ 2013年3月9日
 第2回路地ゼミ 2013年3月20日
 第3回路地ゼミ 2013年4月3日

□ 参考文献



〈序論〉

路地ゼミの目的

路地ゼミの目的は、「路地とは何か」を言語化することにあります。
国語辞典に拠れば「路地」とは「人家の間の狭い道」です。建築法規上は、4m以下の道路を指すかもしれません。しかし、私達は絵画の中に、文学の中に、ふとした日常の中に「路地」を見出すこともあれば、確かに人家に挟まれた4m以下の道路であっても、これを「路地」と呼べるだろうかと首をひねることもあります。
近代建築の計画理論は、人や車が安全で衛生的で効率的に通行出来る道路ないし通路を前提としています。少なくとも「路地」を主題として計画するという観点はありません。永井荷風やB.ルドフスキーが述べるように、路地はあくまで市井の人々の間に了解されている存在であり、教条的な近代建築の理論からは捨象される存在です。そういった意味でも、「路地」という概念そのものが、近代以降を生きる私達の与件と言えるのではないでしょうか。

路地ゼミの方法

「路地」を言語化する為には、私達がどのように「路地」を認識しているかを知る必要があります。「路地」が在民の中で価値を見出されるものである以上、誰かが「路地」を厳格に定義することは出来ません。つまり、それぞれの認識を集積させていくことでしか、「路地」の意味を深めていく方法は無いのです。
路地ゼミには2つの活動があります。一つは、「認識の方法」を議論、整理、共有する為のゼミ。もう一つは、各自がそれぞれの研究主題にフィードバックさせていく為の日記。それらをブログという形式で公開することで、「認識の方法」が匿名的に共有され、もしくは補強される。これらの方法を通じて、ある時間を共有した「私たち」による「路地」の認識を集積すると同時に、路地ゼミに参加した各主体が設計者としての思考の方法を醸成する一助となることを目的とします。

路地ゼミの目論見

「路地」を「発見」すること。
「発見」とは、それまで看過されてきた対象を議論の俎上に挙げようとする動機です。それを裏付けているのは基本的に、身体的な「感動」と戦略的な「野心」です。この「発見」は個人を介して表明されますが、それ自体は時代の産物であると言えるでしょう。つまり、私達は「路地」を「発見」することで、私達の「時代」を照射することを目論むものです。

路地ゼミの展望

1.「系譜」
「路地」の認識に関する研究の系譜を明らかにすることで、今後の研究に資する資料を整理すること。そしてまた、本研究の独自性を担保し先鋭化させていくこと。
2.「建築計画、地域計画」
「路地の認識」を設計活動に還元すること。そして、それを表明し得る言語を獲得すること。
3.「路地本」
本研究を整理し、何かしらのまとまった形で公表すること。それが、近代の理論と私達の時代に対する批評性を発揮し得ること。 

(文責:早田大高)



この『路地本』の製作後はじめて迎えた今回のゼミでは、次の内容が話し合われました。

1、路地ゼミの意義について
約4ヶ月の活動のなかで、路地ゼミは入江研究室内でも特殊な場となりました。それは、学年やプロジェクトの枠をこえて制限なく行われる議論の場であり、互いが批評される場であるということ。もっと言えば「路地とは何か」というある種とらえどころのないテーマを介して、各々が自らの研究主題との間を行き来するように思考し、発信する場を提供しようとしているからかもしれません。
これは一見するとサークル的な活動に陥ってしまう危険性を孕んでいますが、私達の目指すところは、あらゆるシーンでの文化相対主義の浸食によって停滞した現代、いわば無干渉の時代に対する抵抗のように感じられます。

2、認識の方法について
『路地本』序論にあるように、「路地」とはそれ自身の本質からひとえに定義され得ない存在であり、また近代以降を生きる私達の認識のなかで見出されてきた事象であると考えられます。したがって「路地とは何か」の探求はそれらの「認識の方法」を集積させることにあり、それによって初めて意味を捉えられるものだと言えるでしょう。
『路地本』では10通りの認識の方法を示しました。私達は引続き「認識の方法」を議論、整理、共有する場としてゼミを設け、『路地本』に提示した10通りの「認識の方法」を深化させるとともに新たな視座を獲得していきたいと考えます。

3、今日の路地について
本ブログの「今日の路地」はゼミのメンバーが持ち回りで記事を更新してきました。その内容は個人が深めてきた思惟や研究主題に依るもので、今後も同じように続けていきたいと思います。ただし、継続的でより深い考察を得るために、各自が連載形式で更新できるようなものにしたいと考えているので、それに伴ってブログの形式も変わっていくかもしれません。
魅力的な「路地」のように、偶発的多元的な空間としてこの場所が共有されることを期待しています。

4、既往研究について
『路地本』では路地ゼミの歴史的な位置づけを行うために、既往研究として考現学、デザイン・サーヴェイ、それらに反応した諸派の活動をまとめています。当初はそれらの系譜の延長線上に私達の路地ゼミを見据えその独自性を評価しようとしたものでしたが、果たしてそれらの流れの中に路地ゼミが含まれるのか、という疑問が残ります。
そこで、第二期では既往研究の対象をより広く捉え、入江研究室における「内と外の空間論」を含めた広範な研究を通して「路地ゼミ」の歴史的価値を獲得することを目指します。

5、対外的な活動について
「路地ゼミ」の今後の指標の一つとして、研究室を超えた対外的な活動を考えています。それは、書籍の出版やワークショップ、イベントの開催などを通して、研究内容を深めるとともに積極的に私達の活動を社会に発信することです。
このことは『路地本』序論で示した通り「路地とは何か」というテーマを議論の俎上にあげるという目論見はもちろんのこと、その行為自体によって私達の時代に対する一つの姿勢を表明することにもなるでしょう。



文責:渡部 悠


2 件のコメント:

  1. 確認しました。
    今日の路地のスケジュール等もここで公表してしまってもいいのでは?
    また、次回以降ゼミの企画が持ち回り制になるので、宣伝や予備知識等も事前にあげていけるといいですね。

    早田

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  2. 一応、今日の路地のスケジュールは各自の締め切りであって、その通りに更新されるとは限らないので、載せませんでした。
    ただ、更新が滞るようでしたら公開してみるのもいいかもしれません。様子を見てみます。

    渡部

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