2013年3月13日水曜日

今日の路地・4 広場と路地

第一回の路地ゼミにおいて、日本には広場はないが路地はあるということが話題にあがり、広場と路地を対比的なものとして扱いました。そこで今回はその広場と路地について考えてみたいと思います。

この広場と路地について考えるには、欧州と日本の村落の構成に着目する必要があります。欧州の小さな町を訪れるとたいてい町の真ん中には教会があります。その教会には塔があり、町のどこからでも見えます。そしてその教会の前に広場があるといる構成が多く見られます。それに対して、日本の村落というと、山の下を走る街道に沿って細長く集落は配置され、それに対して直角に道から奥まったところに樹木を背にした神社があります。下の絵がそれを端的に示しています(上、サン・ポールドヴァンス 下、江戸近郊八景之内池上晩鐘)。日本人には見えない位置に重要なものを存在させ、それに至るまでの道程を設定する「奥」に対する感覚が早くから芽生えていたと思われます。













このような日本人独特の自然観が発展して、微地形や微妙な屈折など「奥」を持った路地に文化が生まれたのではないでしょうか。 もちろん欧州にも路地はありますが、日本人が持つ路地に対する感覚と外国人が持つ路地に対する感覚は異なるように思います。今後、この路地ゼミを通して路地の空間の分析からその背後にある思想にまで発展して考察を深めていくことができると良いのではないかと考えています。

ということで今日の路地は東京都台東区、廿世紀浴場跡地近くの路地です。


参考文献:
『見えがくれする都市―江戸から東京へ』/槙文彦/鹿島出版会 (1980/6/20)
『日本の景観 ふるさとの原型』/樋口忠彦/ちくま学芸文庫 (1993/1/7)

文責:斎藤愼一

4 件のコメント:

  1. 突然のコメント失礼いたします。
    平井さんのfacebookの投稿からたどり着き、イッキ読みしました。
    路地ゼミいいですね。今日歩いた四谷の路地はなぜか小さな煙草屋が沢山ありました。
    路地ゼミでは、何を以て「路地」と呼ぶのか、その定義があったら是非聞きたいなと思いました。「幅員4m以下」とか、客観的な定義をするのか、もしくは「いい路地の感じ」を要素還元的に分析して設計にまで活かしていくなのでしょうか。どちらにしろ気になります。

    今後も更新楽しみにしています。それでは失礼いたしました。

    中谷研究室 小林千尋

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    1. 小林さん
      コメントありがとうございます。
      現状「路地ゼミ」では、それぞれの路地のイメージを写真や言葉によって出し合い、果たして路地とは何であるかを議論している段階です。参考となる文献等も少しずつたまってきたので、今後はそういったことも含めて路地の定義を考えていきたいと思っています。
      現状は基準法上の「道路」であるか否かといったことは考慮していませんが、h/dの値によってその空間から受ける印象は大幅に異なるということは共通認識としてあります。
      最終的には、「路地」が「街」に対して持つ意味と、魅力的な路地が空間的に持つ要素をどう設計に還元できるかといったことが目的となると思います。
      「四谷の路地に何故タバコ屋が多いか」についても、面白いお話だと思いますので、今後話し合ってみたいと思います。
      まだ、なかなか明確な帰着点の見えない状態ですが、今後もよろしくお願いしします。

      早田

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    2. 早田さま
      ご丁寧な返信、誠にありがとうございます。

      最近ハマって読んでいる『SUR都市空間の持続再生』のオンライン版に、東京大学景観研究室が行っている路地寸法研究+デザイン・サーヴェイの成果の一部がありました。(巻末にあります)既にご存知かも知れませんが、明快な手法にとても関心してしまいました。
      http://csur.t.u-tokyo.ac.jp/publication/sur/pdf/new_001/SUR_01PDF.pdf

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  2. 保田與重郎の『日本の橋』の中で、日本の「はし」には橋、端、箸、縁と言った様に様々な表現があり、「ローマ人は荒野の中に道を作ったが、日本の旅人は道の終わりに端を作った。はしは道の終わりでもあり、遥かな彼方へつながれる意味でもあった。」とも述べられています。天橋立や橋掛といったことも含めてどうも日本人は古来からそういった感性を持っていたようです。それは、日本が島国であることやキリスト教的自然観ではないことも含めて、かなり根の深い問題だと思います。
    そういった全景の部分は戻ってこられなくなるぐらい深いかもしれませんが、帰国子女である斉藤くんの立ち位置も含めて、今後のゼミに期待しています。

    早田

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